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たとえば上司から責められた後、なかなか気持ちの切り替えができないことはありませんか?
課長(声を荒げて):
「なんだ、この報告書は!?こんなやっつけ仕事では上に見せられないぞ!」
部下(俯きながら小声で):
「ですが課長が、『たたき台さえ作ってくれれば後は自分が直すから、とにかく急ぎで』とおっしゃっていたので…」
課長(ため息混じりに):
「そんなのは言い訳だ。プロの仕事じゃない。残業してやり直せ!」
部下:(心の中で)
「そんな、今日は娘の誕生日だったのに…」
※ありがちで、かつ、なるべく理不尽な場面を考えてみました。
過去に受けた理不尽について、思いだす度に怒りがこみあげてくる…
「ああすれば良かった」と、いつまでも考えてしまう…
思考のループにどっぷりとハマり、何度も同じことを繰り返し考えているうちに時間ばかりが過ぎてしまう——
こういった思考を反芻(はんすう)思考と呼びます。
本記事では、まずこの現象がどうして起きるのかを心理学的に掘り下げ、その上で日常的に取り入れられるセルフケアの方法をご紹介します。
※本記事は、日常生活における一般的な反芻思考・堂々巡りについての内容です。心身に不調が現れている場合は、医師や公認心理師などの専門家への相談をおすすめします。
反芻思考・堂々巡りとは何か?
まずは簡単な定義とその特徴からです。
- 反芻思考:過去の出来事や未来の不安を、頭の中で何度も繰り返してしまう状態
- 堂々巡り:同じ問題やテーマについて、「どうすればいいのか」を延々と考え続けるが、結論が出ずに振り出しに戻ってしまう
この記事ではあまり定義について厳密にこだわることはしませんが、反芻思考は「過去や未来の同じシーンを何度も再生する」ようなもので、堂々巡りは「答えを求めて同じ論点をグルグル回る」ような状態と整理できます。
日常での「あるある事例」
日常生活で頻発するのは、以下のような場合ではないかと思います。
事例 | 説明 |
ミスの後 | 「どうしてあんなミスを…」 「なぜ事前に○○に気づかなかったのか」 と何倍にも膨らませて自分を責めてしまう |
議論で言い負かされた後 | 「あの時ああ言えば良かった」 「何で黙っちゃったんだろう」 と繰り返し思い返す |
理不尽な扱いを受けた後 | 「なんで自分ばかり」 「依頼内容を途中で変えるなんて」 相手への怒りを何度も繰り返す |
反芻思考や堂々巡りは、なぜ起きる?どうして終わらない?
無意識のうちに、心の中で以下のようなメカニズムが働いているのが原因です。
解決策を探している
→ イメージトレーニングのように何度も思い出すことで、「あの時どうすれば良かった」 「これからどうすれば良い」といった答えを探し出そうとしている
気持ちの落としどころを探している
→ 「あの時の自分には他にどうしようもなく、最善を尽くした」「明日のプレゼンの為にできることはもうない、あとは寝るだけ」と、自分を納得させようとしている
そもそも正解がないテーマに対して、答えを求めようとする
→「やっぱり転職すべき?」 「でも今の会社にもいいところはあるし」 「でもやっぱりやりがいが…」と後悔しないで済むように繰り返し考える
いずれの場合も、学校の試験のように先生に聞けば正解が得られるといったものではありません。だからこそ脳は「まだ考え足りないのでは?」と、再び思考のループに突入してしまいます。
こういった思考のループは、未来に物事を進めるための生産的・前向きな思考と、部分的には重なる部分があるかもしれません。しかし本人も考えたくないことがずっと頭から離れないとなると、やはり問題です。
比較:反芻思考・堂々巡り/生産的・前向きな思考
項目 | 反芻思考・堂々巡り | 生産的・前向き思考 |
感情の基盤 | 不安・怒り・後悔 | 希望・改善意欲 |
視点 | 主観的・感情的 | 客観的・論理的 |
行動の方向性 | 現状維持・萎縮 | 解決志向・行動志向 |
時間軸 | 過去・想像上の未来に囚われる | 現在と現実を踏まえて考える |
精神状態 | モヤモヤ、疲弊、消耗 | 明確さ、行動意欲の向上 |
怒りが渦巻く反芻思考・堂々巡りの怖さ
反芻思考や堂々巡りの中でも、特にやっかいなのは「怒り」「憎しみ」がベースになっているケースです。この感情は強烈なエネルギーを持ち、思考を長時間停止させ、自分の心へのダメージを押し広げます。
自己への怒り
例:「自分はなんてダメなミスを…」「どうしてあのとき相談しなかったんだ」
⇒このように自分を責める方向、つまり「自己否定」に思考が傾くと自己肯定感の低下につながります。さらに「自分なんて…」という気持ちが続くと、メンタル不調へ向かう可能性が高まります。
他人への怒り
例:「あの上司の言い方は許せない」「あいつがミスしたせいで…」
⇒こういった感情が常に心の中を占めるようになると人間関係に亀裂が入りやすくなります。
仕事・人生への悪影響
こういった状態に一度とらわれてしまうと、様々な悪影響が考えられます。
集中力と効率が低下する:
怒りが頭の片隅で鳴り響いていると、業務に集中できず、ケアレスミスや納期遅延を招きやすくなります。
人間関係が悪化する:
怒りは見えない壁を作り、周囲との信頼や協調性が損なわれます。職場ではコミュニケーション不全につながり、自分だけでなく自分を含むチーム全体の作業効率・生産性が下がる連鎖が起こります。
精神的健康への影響:
慢性的な怒りや憎しみは、うつ症状・不安障害・心身症につながるリスクがあります。さらに、日常の小さな幸福感すら感じにくくなり、ひいては生活の質の低下につながります。
職場で感じた怒りを自宅に持ち帰り、さらにそれが翌日以降まで続くとなると、かなり問題です。次に紹介する方法をぜひ試してみてください。
すぐに実践できる!反芻思考から抜け出す5つの習慣
今日からすぐ実践できる、反芻思考や堂々巡りから抜け出すための対策として5つの方法をまとめてみました。
1.感情にラベルを貼る
自分が感じている感情に具体的な名前をつけることを、「感情のラベリング(Emotional Labeling)」と言います。
- 「なんだか気分が悪いな…」ではなく、「Aさんの発言に対して不満を感じているな」
- 「落ち着かない…」ではなく、「新しいプロジェクトの責任に不安を感じているな」
- 「イライラする…」ではなく、「自分の意見が通らず、悔しさと無力感を感じているな」
⇒「怒り」「不安」「焦り」「悲しみ」「失望」といった具体的なラベルを貼ることで、客観的に感情を認識できるようになり、次に紹介する「メタ認知」につながります。
2.メタ認知で「思考を客観視」する
自分が同じことを繰り返し考えていると気づくだけで思考が止まることがあります。
⇒気づいたら「今、自分はまた〇〇について考えてるぞ」と一歩引いて観察しつつ、心の中で「ちょっと待て、自分」と呼びかけるだけでも意識が俯瞰モードに切り替わります。
メタ認知についてはこちらもご覧ください。

3.タイマー制限で「思考時間を区切る」
タイマーを使って「考える時間は10分まで」と制限を設ける。
⇒制限時間を設けることで「その後どうしたいか?」を意識でき、思考が出口を見つけやすくなります。それでも不安が残るなら、終了後に「次にできる一歩」を小さく書いておくと安心です。
4.言語化・アウトプットする
疲れずにできる簡単な方法は、ノートに「今考えていること」や「不安の原因」を書いてみる。それを信頼できる人に話してみる。
⇒書き出すことで頭の中が整理され、思考ループのパターンに気づきやすくなります。アウトプットすることで頭の中が軽くなり、新たな気づきも得られやすくなります。「言語化」は思考整理の第一歩です。
5.運動・趣味などで「気分のスイッチ」を切替
思考が同じ場所に留まっているときは、体を動かす・音楽を聴く、などにより「心を切り替える」ことが有効です。
⇒軽く体を動かすだけで、ストレスの解消につながり、新しい視点が生まれます。無理なく続けられる「スイッチ活動」を1〜2つ持っておくと日常が安定します。
とにかく1つでも実行してみることが大切
これらの習慣のうち、1つでも「効果があった」「やれば落ち着く」と感じられたら大きな進歩です。どれも特別なスキルや道具は不要です。今からできるセルフケアとして、ぜひ試してみてください。
なお、ここに書いた方法はどれもその気になれば簡単に始められるものばかりのため、かえって「特別感」が感じられないかもしれません。しかし「なんだ、そんなことか」などと決めつけずに、とにかくやってみることが大切です。
メタ認知をさらに高める習慣|瞑想とジャーナリング
この章の最後に、メタ認知をさらに高める方法を紹介します。今回の記事では詳しい説明は省きますが、興味があるかたはトライしてみてください。
瞑想(マインドフルネス)
- ゆったりと呼吸に意識を集中し、今この瞬間の思考や感覚に気づく方法です。
- マインドフルネス瞑想を日常に取り入れると思考のループを俯瞰できるようになります。
- 毎日5~10分の簡単な瞑想習慣でも、思考の“自動運転スイッチ”を切る訓練になります。
ジャーナリング(モーニングページ)
- 起床後すぐに紙やノートに「頭に浮かんでいること」をすべて書き出す方法です。
- 形式や内容へのこだわりは不要で、ポイントはとにかく自分の思考を外に出して見える化することです。
- 不安や後悔、堂々巡りしていた考えが文字にされることで、思考の傾向が見える化され、メタ認知力が自然と育まれます。
まとめ
反芻思考や堂々巡りは、誰しもが陥りやすい「心の習慣」です。それが一時的なものであれば問題ありませんが、慢性的になると感情の消耗や生産性の低下を招きかねません。
本記事で紹介したように、「気づく力=メタ認知」を高めることで、自分の思考のループに気づき、冷静に方向転換を図ることができます。
まずは「今、自分は思考を反芻してるかも?」と気づくことから始めてみましょう。それが、もっと前向きで建設的な気持ちへの第一歩です。
よくある質問&疑問(FAQ)
本記事を最後までご覧頂き、誠にありがとうございます。
内容に関して、想定される疑問点およびその対処法についてFAQ形式でまとめました。