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このシリーズ「新入社員、○○に出会う」は、新入社員が職場で遭遇する出来事や、ちょっと困った上司・先輩とのやりとりを、実体験風のショートストーリーでお届けする連載です。
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各話あたり3分程度で読めるボリュームで、モヤモヤの正体や対処法については後半でちょっとだけ解説します。
営業とはハンティングなのか?
定例会議の議題は、来期の営業方針だった。
従来通り対面営業に重きを置くか、反響獲得のためにマーケティング施策に力を入れるか。
意見が分かれて、なかなか結論が出ない中、先輩が口を開いた。
「飛び込み営業は狩猟で、マーケティングは農耕なんだよ」
……狩猟と農耕?僕が数秒間、その意味を考えているうちに先輩が話を続けた。
「つまり獲物を追いかけて回るのが狩猟で、上手くいけば結果が出るのは早い。種をまいて育てるのが農耕で、時間はかかるけど着実ってこと」
なるほど…、つまりどういうことだ?
そもそも何の話だっけ?
すると課長が腕を組みながら言った。
「孫子にもあるだろう。兵は拙速を尊ぶ、と。昔も今もスピードは重要だ!」
急に古典の話が出てきた。この会議、どこに着地するのか目が離せない。
「あの、狩猟って無駄なんでしょうか?今期は飛び込みで取れた大口契約もありますし」
別の先輩が食い下がった。
「無駄とは言ってないけど、農耕のほうが収穫の見通しが確かなのでは」
「でも農耕は収穫まで時間がかかりますよね」
「だから種をまくのは早いほうがいいんだよ」
それからしばらく、みんなで狩猟と農耕のどちらが優れているかを議論し、途中で課長による孫子の兵法や中国史の話に脱線しているうちに、予定終了時刻が迫ってきた。
「では次回までに結論を出しましょう」
司会がそう言って、どこにも着地しないまま会議は終わった。
ポイント解説:例え話は便利だけど危ない

ここがポイント!
例え話は物事を分かりやすくする一方で、問題の本質を見失う可能性があります。
実際の事例として、先日の「だんじり祭り」での事故をめぐり、さまざまな例え話を用いた議論がされています。
ここでは事故の詳細には触れません。ただ、議論を進めるうえで例え話を持ち出すのは以下のような問題をはらんでいます。
※以下は議論の進め方についての解説で、事故や祭りの是非を論じるものではありません。また、ここに挙げた例は、議論の例示として作ったもので、実際の発言を引用したものではありません
① 誤った類推
一見似ている事例を持ち出して、その類似性・共通点を根拠に結論を出してしまうこと。
例:
「危険性のある格闘技も世の中で認められているなら、だんじり祭りも許容されるべき?」
「昔は普通だった公園の遊具が今では危険だからと撤去されたり、時代によって考え方が変わるものもある。だんじり祭りも考え直す時期なのでは?」
⇩
どちらの例えにも本題との共通点と相違点があります。共通点があったからといっても、結論も同じになるとは限りません。
事故の責任、第三者への危険、当事者の意思、安全対策の妥当性など、背景を無視して結論を急ぐのに例え話が使われてしまいがちです。
② 論点を見失う
例え話を次々に持ち出すうちに、そもそも何が争点だったか分からなくなります。
例:「対面営業とマーケティング施策はどちらが有効か?」
狩猟、農耕、牧畜、中国の歴史や古典、偉人の言葉などを次々に例として挙げたとしても、本題の論点をきちんと整理しないのであれば、話題が増えるだけで答えは出ません。
例え話を持ち出すことで、難しそうに見えた物事がスッキリ単純に思えることがあります。ですが、本当にそれが解決につながる議論になっているのか、立ち止まって考えてみることが必要です。
こうして来期の方針は示された
後から聞いた話では、あの会議で結論らしい結論が出ないまま終わってしまったことについて、課長は部長に呼び出されて怒られたらしい。
そりゃそうだ。僕が部長だとしても、そこは注意せざるをえまい。
後日の会議では部長も参加し、論点をてきぱきと整理していった。
- 来期の目標達成のために新規契約が何件必要か
- 反響・問合せに対する契約率は何%くらいか
- 契約率から逆算して新規の反響・問い合わせは何件くらい必要か
- 反響・問い合わせの頻度が今期のままだとしたら来期はどうなるか
あれこれ分析してみると現状のままでは来期の目標を達成するのは困難で、反響を増やすためのマーケティング施策が追加で必要、という結論になった。
こうして部長の助力により来期の方針が示された。ついでに僕は中国史について少しだけ詳しくなった。
